ここに妻と息子に先立たれた齢3桁の老人がいます。老人には娘がいましたが、全く実家に寄り付きません。
老人の息子には娘と息子がいました。老人は身の回りの世話をしてくれる孫娘と養子縁組をしました。これにより老人の子は娘、亡くなった息子、養子の孫娘の3人となります。
老人が亡くなったとき、相続人は①老人の娘②老人の孫娘(代襲相続人かつ
養子)③老人の孫息子(代襲相続人)の3人です。
老人の子は3人ですので老人の娘の法定相続分は⅓です。
同じく老人の息子の法定相続分は⅓ですが、既に息子が亡くなっているので2人の孫が代襲相続人となり、その法定相続分は息子の法定相続分⅓を2等分して⅙ずつとなります。
でも、孫娘は老人の養子ですから子どもとしての法定相続分⅓があるわけです。どうなっちゃうの?
実は孫娘は子としての法定相続分⅓と代襲相続人としての法定相続分⅙の両方を取得することができるのです。
すなわち孫娘の法定相続分は⅓+⅙=½となるのです。
代襲相続人としての身分を有する孫娘が養子縁組により養子としての身分も取得すると、それぞれの身分に基づく法定相続分を重ねて取得することができるのです。
しかし、2つの身分を取得したからといって、常にそれぞれの身分に基づく法定相続分を二重に取得することができるわけではないのです。
それは、夫婦の一方が、配偶者の親と養子縁組をした場合です。
子のない夫婦がいます。夫は妻の両親(既に他界)と養子縁組をしています。すると、夫も両親の子(養子)となり、夫と妻は兄弟(姉妹)となるわけです。
でも、相続においては夫も妻も互いに兄弟姉妹としての取り扱いはしません。
例えば、夫が妻の両親と養子縁組をし、その妻に弟が1人いたとします。妻が亡くなり、相続人が夫と妻の弟だったとします。配偶者である夫の相続分は¾です。
けれども、この場合夫は妻の兄弟としての法定相続分を取得することができないのです。相続において妻の兄弟は弟1人だけということになります。
夫の法定相続分は¾、妻の弟の法定相続分は¼となります。
法定相続分は意外と複雑です。こんなときはぜひ専門家にご相談ください。